ホーム・ベイカリー事件


「運転中どうにも胃が重くて、気分が悪くなってきたもので」モナハン保安官は申し訳なさそうに言った。

「もし重曹がおありなら、拝借できませんか?」

年は60代で、いかにも母親といった雰囲気を漂わせているダフィ夫人はにこやかに微笑んだ。

「ちょっとキッチンに座ってらしてくださいな、保安官。

あいにく重曹はありませんけど、おいしい紅茶を淹れてさしあげましょう。

不思議なほどにすっきりとするはずですよ。お試しあれ」

モナハン保安官が素直に腰を下ろすと、ダフィ夫人はこじんまりとした使いやすそうなキッチンで

忙しげに働いていた。

生活の糧を自分で得ながら一人暮らしをしている親切な女性のことを

保安官は常々尊敬していた。

保安官は紅茶を飲み終えると、立ち上がっていとまを告げた。

「ずいぶんと楽になりました。本当にありがとうございました」

外に出たところで、ダフィ夫人の小型ヴァンが南側に停めてあるのを見かけた。

話に聞いている通り、夫人は自分で焼いたパンやケーキやパイを高速沿いのホテルに卸しているのだ。

保安官はヴァンのピンクの文字を読んだ。

”ダフィおばさんのホームメイドパイ、ケーキ、パン”。

それから思案顔でしばらく夫人の家をみつめていた。

街に戻ると、保安官はハレンジア博士に電話をかけた。 

高名な犯罪学者に家宅捜査令状をとるべきだと熱心に勧められ、1時間もたたないうちに

保安官は夫人のいえに引き返した。

家を捜索した結果、ダフィおばさんのパイ、ケーキ、パンは、店で売ってるものを買って来て、

包装をはがしただけだということが判明した。

だが、大きな長いパンの塊に1本ずつ隠されていた密造ウィスキーは

間違いなく自家製だった。     





Q5

どうして保安官は夫人に疑いを抱いたのでしょう?


by ドナルド・J・ソボル


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A5
夫人の「あいにく重曹はありませんけど」と言う一言で
保安官は ここではパン類を焼いていないと気づきました。
重曹は別名をふくらし粉といい
パン類を焼くためには欠かせないものなのです。


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